リアリティの回復

 リアリティの回復。月並みな言葉と言われても、やはりそれが、私たちの世代が目指さなければならないものだと痛切に思う。これほどアンフェアな状況が至るところに噴出しているのに、不思議と私たちは「痛み」だと気づけない。

 リアルをつかむ理論を、我々は思想史的に喪失した世代かもしれない、しかし、ならばそれぞれの生のリアリティを研ぎ澄ませばいいことなのだ。その方法を文学とも言った。

 リアリティはそう簡単には見出せない。しかし見えていないかと言えば決してそんなことは無い。たとえば、嘘のようだが、数千光年先の星を私たちは自分の肉眼で見ている。あまりに遠いが、確実に星と自分の目は真っ直ぐつながっている。文学はそんな営為にも似ている。

(2012.10.1)

This entry was posted in Essay. Bookmark the permalink.