新聞や雑誌記事、新書やドキュメンタリー番組で語られる問題がそっくりそのまま出てくる文学作品がどうも多くなった気がする。人間像も然り。
それは同じ「現代社会」の問題を共有しているかどうかはひどく疑問だ。むしろジャーナリズムが作り上げた問題群や人間像を単に無自覚に受容しているだけではないかと思う。
そうした作品はとてもわかりやすい。その作品を読む前からよく知っていたことが書いてあるから。でもリアリティがあるようで、リアルではない。安心して読めるが、何の驚きもない。
個々人の生の実感で世界を捉えていくのだから、本来文学作品は読者にはわかりにくい。しかしだからこそ抜き身のリアリティがある。そういったものが信頼に値する芸術だ。ジャーナリズムが評価を書きやすい作品とは、一体芸術として独立しているものだろうか。
作品自体はシンプルで力強く、しかしにわかに何が起こっているかわからない、そんな作品が欲しい。
(2012.12.20)